3月末日をもって、国民的番組「笑っていいとも!」の放送が終了しました。平日昼間ということもありほとんど見る機会は無かったのですが、32年間も続いた番組や司会のタモリさんには敬意を表したい思いです。
この番組はバラエティではあるものの、時々は教養的なテーマも取り上げていたようですね。かくいう私も2年ほど前に番組の「終了後トーク」のコーナーに招かれて「人はなぜ夢を見るのか」というテーマで1時間ほどスタジオアルタのステージで解説してきました。元々は当時の金曜レギュラー(ベッキーさん、関根勉さん、劇団ひとりさん、草薙剛さん、秋元才加さん)とタモリさんの夢を分析するという取材をうけたのですが、どうしてそういう分析になるかについて説明したところ、ADさんや放送作家の方々に妙にうけてしまって、「笑っていいとも!増刊号」の特集の放送枠に入れるからと説得され、新宿まで出かけることになりました。
その1ヶ月ほど前のことなのですが、金曜日の終了後トークで2週にわたって出演者が夢の内容について話をすることになりました。皆さんさすが芸能人、それぞれ自分の見た夢を上手に説明するので、他の出演者や観客の皆さんは思わず引き込まれてしまい、同じテーマが2週にわたって展開されることとなったようです。しかし、どちらの回も「なんでこんな夢見るんでしょうね」「この夢はいい夢なのか悪い夢なのか、聞いてみたい」という結論になっていました。
こんな背景で出演したので夢の解説が中心になるだろうと思っていたのですが、いただいた約1時間のうち1/3は「なぜ夢を見るか」についての説明、1/3は夢の種類や役割について、残りの1/3は出演者の夢の分析という構成になりました。でも放映はたった13分ちょっとに編集されていました。しかし、大筋の内容はほぼ正確に伝わるような編集で、スタッフさんの理解度の深さには脱帽です。でも、この番組としては異例の長尺の特集だったようです。担当者の方の思い入れ、感謝です。時間の関係からそれぞれはしょってしまったので舌足らずの感も否めないものの、皆さんほぼ納得してくださったのでまずは安心でした。ただ、夢分析のくだりはもう少し突っ込んだ説明をするともっと面白くなったのになあ、と思っていました。
そんなおり、INF社長の吉川様から「笑っていいとも!増刊号」で放送されなかった解説や説明しきれなかった分析などをコラムに書いてみませんか、と声をかけていただきました。INF社は翻訳業が主たる事業の会社ですが、夢の分析というのはある点で翻訳作業に似ています。夢に出てくるものが何を意味しているかを分析して個人個人の背景に照らしてストーリー立てて意味が通るように説明するわけですね。この作業は結果だけみると眉唾な感じがしますが、脳の動作原理を理解した上でご覧いただくと、なるほどと納得いただけると思います。
そこでこのコラムはまず「なぜ人は夢を見るのか」をご理解いただくために脳の情報処理の原理について簡単に説明することからはじめて、それに基づいて「笑っていいとも!増刊号」のレギュラー陣の夢の内容とその分析などについて連載で解説していきたいと思います。途中に疑問やご意見、もしくはこんな夢見たのだけれどといった相談などあれば適宜お受けしたいと思っています。
次回は「脳は何のために働いているか」について書かせていただこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
名古屋大学環境医学研究所脳機能分野 澤田誠